第219号 「行く道、まだ半ば」

 人には若い時にしかできない事もあれば、若い時には見えない事もあります。この若いという意味は、実年齢の事だけではなく、その道における精神的な成熟さも含めてという事です。

 若い時は、肉体的な強さや、技の巧みさ、スピードを求めます。それは勝つことが目的だからです。負けてしまえば意味がない。勝つために強くなりたい。強くなりたいから稽古をする。それは決して悪い事ではありません。体を虐めるように鍛えて力をつけるのは若い時にしかできない事です。

 そして、体力もスピードも衰えた時、その時に何が見え、何を目指すかは一人一人違うと思います。でも、日々精進していれば、若い時や初級者や中級者だった時には見えなかった何かが必ず見えてくる。それが道における成熟なのではないでしょうか。

 強さにこだわるのは良い事だと思います。武道を修めるからには、何歳になっても強くなりたい。でも、どうやったら相手の隙をついて勝てるかばかり考えているのは、良い言い方をすれば若い、悪い言い方をすれば未熟なのだと思います。相手を圧倒すること以上に、相手を受け入れる事が出来始めたら、そして自分の強さを磨くこと以上に、自分の弱さを受け入れる事が出来始めたら、それこそが次の更なる高く険しい道への道しるべが見えたという事なのではないでしょうか。

 そこから先は、恩師や多くの友人や家族が見守り、時には背中を押し、手を引いてくれるはずです。ですから、あとは我慢強く一歩一歩踏みしめて登ってゆけば良いのだと思います。長い長い道のりなのですから。