第202号「負けるか負けないか」

試合には勝ち負けがあります。
試合の規則で引き分けという事もありますが、本当の勝負に引き分けはありません。
また、勝った方が必ずしも偉いという事はありませんが、結果は結果です。
どんな結果でも、周りはそれを受け入れるべきです。

ただ、剣道自体には勝ち負けがあるわけではありません。
なぜなら、道を目指すことに、勝敗はないからです。

人間は愚かなので、どうしても他人と比較してしまいます。
あの人は試合で勝ったのに、自分は試合に負けた。
自分は審査に落ちたのに、あの人は審査に受かった。

日常でも同じことが言えるでしょう。
あの人は自分より給料がいい。あの人は自分より見た目がいい。
収入の高い仕事についたり、結婚をしたりした人を「勝ち組」
それが出来なかった人を「負け組」なんて言う人もありますが、
それは果たして勝敗と言えるでしょうか。

自分が人をうらやましいなあと思った時は、
多くの人が支えてくれる事を思い出すようにします。
こんな自分を支えてくれる多くの人がいる。
こんな自分を愛してくれる人達がいる。
そのことに感謝をする。

そして、他人を自分と比べて羨む代わりに
「よかったね、おめでとう」と思えばいいんです。

どんなに気に入らないと思う人でも、
あるいは、どんなに羨ましいと思う人でも、
それなりの結果を出した人は、他人には見えないけれども、
多くの代償を払って、多くの物を犠牲にして、
その結果を得ている事が少なくありません。

そして、後は自分が出来ることを、
頑張ってやればいいだけです。
自分が自分のできる事をやる。
自分自身を見つける。
自分の道を行く。
剣道で言えば、自分の剣道をする。
誠の心を以て、つまり飾らない心で剣道をする。

剣道では誰もが輝いている瞬間があります。
それは、人それぞれみんな違うのです。
試合で輝く人、指導者として輝く人、普段の稽古で輝く人、
子供を世話をする時に輝く人、一人黙々と稽古をしている時に輝く人。
剣道の仲間として酒を酌み交わす時に輝く人だっているんです。

人生の他の事も同じだと思います。
各人が自分の出来る事を頑張っていれば
必ずどこかで輝くことが出来ると思います。

どうしても他人に勝ちたいと思ったら
他人に負けるか負けないかではなく
まず、自分に負けるか負けないかを考えるべきです。
本当の相手は自分なのです。

そうすれば、目の前の勝敗や優劣ではなく、
長い道程の中で、どのように自分を磨いていくことが出来るのかを
きっと考える事が出来るようになると思います。

そして、あなたが一生懸命努力している姿は、
きっと何よりも一番輝いていると思います。