第175号 「感謝」

 先日、日本で行われた外国人指導者講習会に
参加してまいりました。一週間合宿を行い、
朝から晩まで講習会並びに稽古に励むのですが
すばらしい講師陣にすばらしい道場での稽古は
なんとも贅沢なものでした。

 ただ、私のような中年とっては、
張り切って参加させて頂いた朝5時からの
自主稽古での先生への掛り稽古は
さすがにちょっとキツかったです。

 しかし、いろいろな国から剣士たちが集まり、
共同生活のなかで共に稽古を行い、
最後に酒を酌み交わすというのは
めったにないすばらしい経験です。
一生の思い出です。

 南北アメリカ大陸、アジア、オセアニア、ヨーロッパの
西欧諸国のみならず、ハンガリー、チェコ、ルーマニア、ルクセンブルグ
ロシアまで、東欧の国々の方も多くいらっしゃいました。
日本の剣士に負けないくらい真剣に取り組んでいる方ばかりでした。

 ずっと剣道をしていても、日本に来るのは初めて
という方も意外と多かったようで、剣道発祥の地を見る
よい機会になったと思います。

 現在、それぞれが分かち合えた時間を惜しみながら
祖国に帰って行った今も、どこか地球の裏側で、
同じように素振りをしながら、厳しい稽古に耐えながら、
同じ剣の高みを目指している多くの仲間たちがいることを思うと
実に感慨に尽きません。

 審査でも、そのキャンプで初めて会った友達、先生方が
わざわざ審査会場で見守って下さいました。
心から応援してくれて、心から合格を喜んで下さいました。

 そして、パースにもどったその週末に、今度は日本から
尊敬する先生や剣友たちが大勢パースを訪ねてくれました。
今度は地元の剣士も交えて、旧友たち、新しい友達とも
楽しく真剣に竹刀を交わすことができました。

 その最初のパース桜剣道クラブでの稽古では
全く予想していなかったサプライズで、
昇段祝いの花束やプレゼントを頂き、
ノンアルコールのシャンパンで
生徒達、保護者の皆様、先生方、多くの友人、
多くの仲間たちが乾杯をして下さいました。

 本当に剣道をやっていてうれしいこともたくさんありましたが
こんなに幸せな気持ちになったことは今までなかったと思います。

 大勢の仲間にかこまれて、健康で剣道ができる事に、
そして剣道をする事をサポートしてくれる家族に、
改めて心から感謝しました。

 頂いた剣道着に刺繍してあった言葉は「和以為貴」。
(和を以て貴しと為す)お互いを認め合い、
分かち合い、理解し合うことのすばらしさを
私は剣道の仲間たちから教わったのです。

 まさに「交剣知愛」を我が身を以て感じた
この数週間でありました。すべての剣友に感謝します。

第174号「雪国の竹」


 竹刀の竹に、ときおり茶色いしみがついているものがあります。
竹は植物ですから、当然成長過程で傷がつくものもあります。

 竹刀に使う日本の真竹は寒い地方で取れたものが良いといいます。
厳しい環境の中で、時には雪の重みをささえ、
雨風に耐え、曲がったりしなったりしながら育つので
繊維が細かく強いのだそうです。

 子供も同じではないでしょうか。
あまりにも厳しく重圧を与えすぎると、折れてしまうし
上から押さえてつけすぎては、伸びるものも伸びません。

 しかし、時には厳しい環境で耐えて、それを
跳ね返してゆくことも、人間の心を強くするのに
大切なことだと思います。

 暖かいだけの環境ではでは、大きくなるかもしれませんが
大きくなるだけなっても、それが弱ければ意味がありません。

 どの子供たちにも、雪国の真竹のように
丈夫でしなやかに育ってほしいものです。

 また、子供たちだけでなく、大人たちも
曲がらずに真っ直ぐ自分の誠意を貫くがごとく
日々を過ごすことができる強くしなやかな心を
剣道を通じて身に着けられるよう、
精進して行ければと思います。