第139号 「四十肩」

 四十代半ばにして、とうとうなってしまいました。
そう、四十肩です。

 車の運転が終わって、車から降りてトランクを開けたとたんに
「アレ?腕があがらない」
無理に上げると肩に不穏な痛みが走りました。
あ、これはもしかして、と思ったら案の定です。
それからほとんどの角度で左腕を肩より上に上げることができず
うっかり左手でコップをつかむと「ううっ」という状態になってしまいました。

 しかも稽古の前にです。そして稽古。

 不安を抱えてのぞんだ稽古ですが、不思議なことに
なぜか竹刀を持って、まっすぐ左手を額の上まで振り上げる動作だけは
普通にできるんです。でも、他の動作はまるでだめ。
早く違う角度から竹刀を振り上げて打とうとすると
ぜんぜんうまくいかないどころか、肩が動かない。

 「はっ!これはきっと、まっすぐ大きく振る稽古をしろという意味に違いない!」
と、得意の訳のわからないポジティブシンキングで稽古をしたんですが、
まあハンディがあるとかえって燃えるというか、楽しく稽古ができました。

 肩に関してはありがたいことに色々な方が色々なアドバイスを下さいました。
そういえば、大昔に読んだ本には、「よく暖めて動かす事」と書いてあった気がしました。
うすうす「これは絶対に違うんだろうなー」と思いながら、ちょっとネットで
検索してみると、やっぱり少し違いましたね。(笑)

 結局のところ、名前は違うものの症状は他のスポーツ障害と同じで、
動きに痛みが伴うのは、つまりが損傷か炎症ですから、
他の怪我と同じく、急に痛みが出たときは
RICE-Rest(安静) Ice(冷却)Compression(圧迫)Elevation(高挙)
と呼ばれる処置が有効です。

 ということで、稽古の後は帰宅してすぐにアイシングをして
消炎剤の入った湿布をしました。肩は既に心臓より上ですから
問題ないとして、アイシングパッドをタオルでしばって
おしつけながら、その上からちょっときつめのジャージを着ていました。
後はマッサージチェアで肩甲骨の筋肉の硬くなった部分も
もみほぐしながら、そのまま爆睡です。
翌日は相当痛みもひいて、いい感じです。

 そして、痛みが治まったら暖めて血行を良くしながら
少しずつ可動域を広げるということが必要のようです。

 肩を使う運動といえば...素振りです。
よし、今から素振りだ!!!
(心配してくださった方々、頭悪くてすみません。)

 皆様も、怪我にはお気をつけください。

第131号  「人事を尽くして2/2」

 前回からの続きです。仲間、保護者の剣道経験者、他の愛好家、
この3つのグループに共通する稽古に来る条件というのは

1.稽古がそれぞれのレベルで厳しく楽しく、
  なおかつ、技術の上達につながらなければならない。
2.子供の指導を通じて剣道を学ぶことが楽しくならなければならない。

という部分です。まず、楽しいことが必要です。
楽しくなければ人は自発的にはやりません。目標が無ければ
なおさらのことです。

 剣士にとって、目標というのは新しい技術を習い身に着け、
自分の技術が上がることであります。楽しみと言うのは、
稽古して身につけた技術が相手に通用すること、その技を色々な
剣士と試して立ち会うこと。そして新しい友達ができること。
友達と言うのは、どんなレベルであれ、純粋な気持ちで
真剣に立ち会える仲間と言う意味です。
これら全てが具体的な1の内容です。

 ですから、どんな方がきて下さっても、時間がある限り
また、怪我のない限り自分が稽古に参加するようにしています。
ラッキーなことにというか、桜剣道クラブをお手伝い頂いている
方々は、単に教えるのが好きという方はいらっしゃいません。
おかげで、本当に楽しく稽古させて頂いております。

 地元の方で、初級者、中級者には一言でも必ずアドバイスをしたり
色々な技や稽古方法をできるだけ教えてあげるようにしています。
これが彼らにとっての最大の利益なのです。

 それでは2番目はと言うと、それは剣士自身の心の持ち方に
依存することになります。その為には
「自分の楽しみが自分の利益となり、他人の利益となる喜び。」
という意識を指導陣が共有できるようにする事が一番大切な
ことだと考えています。

 その一つに、子供たちが稽古の終わりの子供達の礼があります。
子供たち一人一人と笑顔で挨拶ができることの喜びを知ることが、
子供達の指導に対するモチベーションの一つにもなっているのです。

 では、そうした事を皆にわかってもらうにはどうしたらいいか。
それには、偉い先生でもない私が座ったままで偉そうな事を
言っても駄目だという事です。真っ先に防具をつけて、気合いで
子供たちを引っ張って稽古のムードを作り、大人との稽古も
怪我の無い限りは出来るだけ長く立って、全員と稽古をする。
こうした姿勢を常に意識して見せていかないと、皆が協調して
くれる事はありません。

 つまるところ、人をまとめるには、よほどの強い大先生で
ない限りは、やはり自分が率先して動いていかなければ
難しいとうことです。

 よく「リーダーとして仕事を任せられる人を育てなさい」
と言いますが、まずはリーダーが
「仲間には腹を見せ、若い人には背中を見せる」
を信条にして、とにかく自分が努力することです。

 若い人に対する教育と言うのは、その上で成り立つ物だと
思うのですが、いかがでしょうか。

 最後に指導方針に関してですが、実はこれは色々と
細かく口で説明しなくても、大人も子供も既に皆が知っています。
稽古の始まりと終わりに、大声で唱和する

「剣道は、礼に始まり、礼に終わる。」

これこそが、全ての事を総括した指導方針です。

 とまあ、こんな感じでクラブをはじめ、現在、体育館も
狭く感じる様になるほど、子供たちにも地元の剣士にも
参加してもらえるのは、なんともありがたいことです。

第130号  「人事を尽くして1/2」

 さて、今回はクラブ設立運営の人事に関することです。

 剣道を教えることができる人がたった一人いるだけでは、
良いクラブはできません。これは社長一人の会社では
手広く商売を広げるのは無理だということと同じです。
したがって私一人では剣道クラブは指導も運営も出来ません。

 幸運なことに、パースには剣道愛好家が思ったより多く
しかも更に幸運なことに、現役の日本人の剣道愛好家も
何人もいらっしゃるということです。

 しかし、こういう方々に、どの様に気持ちよく経営の
お手伝いをして頂けるか、というのを考える事が、
クラブをの指導体制を確立する準備を始める、一番最初に
考えた事でした。

 パースに住む日本人で剣道の指導をお手伝いして頂ける
可能性のある方々のグループを考えると、まずは現役で、
同じ道場で普段共に稽古をしている剣友の皆さんです。

 皆さんが二つ返事で何も言わず協力して下さっているのは、
大変ありがたい事です。しかも、ちゃんと主旨や指導方針を
理解して頂いての上です。

 保護者以外で、こういうご理解のある方々にお願いするには、
やはり大人の稽古の場所と時間があることが必要です。
皆、指導と同時に、当然ながら自分の稽古もしたいと
思っています。剣道が好きなら当然の事です。それに、
私だって皆さんと稽古したいですからね。

 次に剣道経験者の保護者です。

 自分ではないが、自分の親、兄弟が剣道をしている。
学生時代に剣道をしていた。そんなことでも保護者が剣道を
知っていれば、やはり熱の入れ方が変わります。子供に
剣道をさせたいというのは、剣道に対して悪い思い出を
持っていないということです。

 だから、各人が自分なりの厳しさを求めて稽古を行う
ことの出来るクラブ、つまり、ずっと昔に剣道をやめてしまった
お母さんたちが安心して剣道を再開できるような、
そんなクラブが作りたかったのです。

 さらには、色々なレベルの人や色々な目的を持つ人々が、
自分のレベルで稽古が出来る場所を作りたかったのです。
 お母さんやお父さんたちが子供と一緒に剣道を学ぶ
このすばらしさを皆さんに知って頂きたかったのです。

 そして、地元の剣道愛好家。

 人が集まれば、それが更に人を呼びます。今では地元の
クラブの人達もお手伝いをしてくれるようになりました。
ただし、その為には誰でも彼でもと言うことではなく
まずは、クラブのコンセプトと指導方法を徹底的に理解してもらう
必要がありました。子供の稽古を受けたことが無い人が
ほとんどですから、特に若い人には、どのように子供の稽古を
受けるかも指導する必要があります。

 これが一番大切なところで、稽古は受ける人によって代わります。
相手を引き立てる、つまり「ここ」と言うところで打たせるには
それなりの技術や経験が必要なのです。そう言った指導方法を
学べる場所を提供出来るのは、このクラブの一つのサービスになり得る
と思ったのです。

 つまり、彼らが理解できない日本語での指導の中でも
彼らにとって十分な利益になる部分があるべきであると考えたのです。


つづく

第129号  「商売繁盛、其の3/3」

続きです。


5 経費と価格

 剣道と言うのは初期費用がかかります。剣道着、竹刀、
防具を購入しなければなりません。これが剣道を始める
生徒の最大の障害になっているのです。

 しかも、海外で始めるのですから、道具の調達も非常に
難しいところがあります。簡単に最低の値段を見積もっても、
600ドルはかかります。

 普通は習い事の授業料の相場はもっと高いのですが、
そういった理由で保護者の負担は必要最低限のものに
しなければなりませんでした。

もともとは、ただでクラスをやろうと思っていたくらいですが、
しかし、大会やイベント準備には、やはり費用がかかります。
メダルも買わなければなりません。2ドルではあまりその足しには
ならない、しかし5ドルでは高すぎる。そこで一回の参加料を
3ドルにしました。そして多少余裕ができれば、子供たちに
還元されることに使いたい、また補習授業校をはじめ、
邦人社会の役に立てるような事に使うことができればと思いました。

 そして、この運営資金の中から、防具や竹刀調達の立て替え
をしたり、クラブのバナーを作ったり、連盟費用を補助したり、
子供たちにも、たまに飲み物やスイカの差し入れができるように
なった訳です。

 それからサイズが小さくなった防具はクラブで半額で買い
取って、次の必要な方に半額で買って頂ければ、それもまた
良いと考えております。

 ありがたいことに、小さくなった剣道着や袴は寄付して
頂く方も多く、成長して剣道着や袴のサイズが小さく
なってきた年下のお子さんにまわすことができます。
 
 それから、この大きな初期投資を無駄にしない一番
大切なこと、それは子供たちが剣道を続けてくれることです。
せっかく買った防具が擦り切れるまで、一生懸命稽古を
続けられる環境を与えてあげられること。これが私たちの
まず一番近い目標です。

 とまあ、随分長くなりましたが、これが桜剣道クラブを
立ち上げる際に準備したことなのです。

 しかし、実際には始めてみてわかったことが
たくさんありますし、これからもっと変えて行かなければ
ならない課題が数多くあり、毎日どうしたものか
と考えております。

 これもすべては子供達が生き生きと稽古に励む顔を
見るため、大好きな剣道の為と思えば、苦労のしがいも
あるというものです。

 そして、このクラブを通じて多くの方々と出会う機会を
与えていただいたことが何よりの財産だと感じています。

 なぜそれが私の財産なのか。それは、子供たちも
指導陣の皆さんも、そして保護者の皆さんも、
共に同じ道を歩む仲間、そしてそれを支えあう仲間
だからです。仲間ができるということはすばらしいことです。

第128号 「商売繁盛、其の2/3」


 前回からの続きです。

 私が行おうとしているのは大手が手を出さない隙間業界です。
パースで剣道そのものがマイナーなスポーツですが、その少ない
市場の中で70パーセントのシェアを占めることができれば成功だと
考えました。

 なぜ100パーセントではないかというと、全ての人が自社の
サービスに満足する事は目指しますが現実には難しいと思います。
全てのニーズに対応するには、サービスの幅をかなり広げなければ
なりませんが、それに伴う費用と労働力の確保が難しいと
予想されたからです。また、そういう人たちの逃げ道もあった方が
良い訳です。そもそも、市場が一企業による独占されれば
競争のない市場はサービスの低下が始まり健全な市場とは言えません。

 そこで、漠然と「子供の」とするのではなく

1.日本語で教える
2.日本の礼儀作法と心構えを教える
3.剣道を通じた人間教育を行う

をコンセプトとして設定し、客層を絞ることにしました。


4.客層

 さて、このコンセプトに合うターゲットであれば
俄然「日本語がわかる中学生以下の子供」に絞られてきます。
また、特例として日本語がわからなくても
親が剣道をしていて子供の指導をサポートできること
という事を条件にしたわけです。

 実は本心から言えば、英語でもかまわないんですが
他のクラブ(私の行っている地元のクラブとか)の
競合相手になってしまうことを避けたかったのも
理由のひとつです。ですから、最初から間口を広げる前に、
まずは対象になる生徒を絞ろうと思ったのです。

 市場を絞ることで、その市場でのシェアの強者に
なろうと考えたのです。まさに小さい会社が大手の
手がまわらない、ニッチで特殊な業界で利益を
あげるのと似ています。

 また日本人学校との接点もありますので、補習授業校
日本人学校の生徒を中心として、他に口コミで
興味がある方が来ればいいと考えておりました。

 対象年齢ですが、これは最初は手探りでした。
小さいお子さんは、個人差が大きいので、一概に言うこと
はできませんが、一番ネックになるのは身体能力です。

 同じ年齢が低い生徒でも、体の発達具合や、精神的な成長
の違いで指導方法は変わりますが、防具をつけて打ち合える
体力が本格的につき始めるのは、平均的には小学校3年生
くらいからなのです。

 しかし、剣道を通じての人間教育ということが
わがクラブの大前提にありますので、小さい子供にこそ、
生活の中での習慣として学んでほしいという願いから
基本的には小学校一年生からという事に設定したのです。

 
つづく